会社で生成AI研修を実施した。
社員もきちんと受講した。

それなのに数週間後、会議もメールも資料作成も、仕事の進め方はほとんど変わっていない。

そんなとき、

「社員がAIに興味を持っていないのでは?」「結局、本人のやる気の問題では?」と思ってしまうかもしれません。

ところが、2026年6月に行われた大企業の生成AI研修に関する調査を見ると、少し違う景色が見えてきます。

期待した成果が出ていないと答えた企業担当者に理由を聞いたところ、「コンテンツが業務の実態に合っていない」が48.6%、「受講者によって理解度・習得度にばらつきがある」が48.6%でした。

「受講者のモチベーションが低い」は5.4%でした。

少なくとも、この調査から「社員のやる気だけが問題」とは言えません。

生成AI研修の活用に悩む企業担当者

生成AI研修は実施しました。
でも、普段の仕事ではほとんど使われていません

生成AI研修の成果に悩む経営者

ChatGPTの使い方を教えれば、社員が自然に活用してくれると思っていました

生成AI研修会社の選び方に悩む企業担当者

研修会社を選ぶとき、どこを見ればいいのでしょう?

上記の疑問を解決します。

先に結論を言うと、生成AI研修が身につかない原因を、受講者だけに求めるのは違うと思います。

問題になりやすいのは、

「AIを教えること」と「仕事で使えるようにすること」が、同じものとして扱われていることです。

私自身、これまで複数のリスキリング研修でサポートに入ってきました。
もちろん、すべての研修会社が同じではありません。
実際の業務まで考えられた研修もあります。

ただ、少なくとも私が関わった範囲では、「研修を受けた翌日から、自分の仕事で使えるところまで」設計されていた研修は、ほんの一握りでした。
決められたプロンプトを入力する。
AIから文章が返ってくる。

「できました」で次へ進む。
研修中は理解できたように感じます。

でも会社へ戻った瞬間、

「で、自分の仕事では何を頼めばいいんだろう?」

ここで止まるのです。

研修当日は「できた」。
ところが翌日には「何を頼めばいい?」となる。
この差を埋める設計が必要です。

私が問題だと思っているのは、リスキリング研修そのものではありません。
「受講させた」「カリキュラムを終えた」で完了してしまう研修です。
仕事で使えるところまで届かなければ、会社が研修費を使った意味も薄くなってしまいます。

生成AI研修を説明するMiki AI講師
Miki@AI講師

この記事でわかること

  • 生成AI研修を受けても仕事で使えない3つの理由
  • 「AIを学ぶ研修」と「仕事で使える研修」の違い
  • 企業が生成AI研修を選ぶときに確認したいポイント
  • 受講人数では測れない、生成AI研修の成果の見方

生成AI研修が身につかない3つの理由

研修会社の説明を見ると、

「ChatGPT基礎」「プロンプト作成」「生成AIの業務活用」「最新AIツール」
といった項目が並んでいます。
内容として間違っているわけではありません。

問題は、その先。

研修で覚えた知識が、自分の仕事へ戻ったときにつながる設計になっているかです。

理由1 教えているのが「AIの使い方」で、「仕事の見つけ方」ではない

生成AIをどの業務から使うか悩む企業担当者

AIを使ってみてと言われても、
自分の仕事のどこから試せばいいのかわかりません。

「ChatGPTでは文章を作れます」

ここまでは、多くの研修で学べます。
では営業担当者なら、何に使うのでしょう。
商談後のお礼メールなのか。
議事録の整理なのか。
提案書を作る前の情報整理なのか。
総務担当者なら、また違います。
社内案内の下書き、マニュアル整理、問い合わせ内容の分類など、同じChatGPTでも対象になる仕事は変わります。

生成AIを仕事で使うには、AIの機能より先に、

「自分は毎日、何に時間を使っているのか」
を見つけなければなりません。

2026年版中小企業白書でも、AIを活用していない企業に課題を聞いたところ、最も多かった回答は「活用する業務がイメージできていない」の63.4%でした。
「AIに詳しい人がいない」40.0%、「社内ルール・ガイドラインが整備されていない」26.2%より多い結果です。

ここはかなり重要です。

企業が困っているのは、ChatGPTのボタンの場所がわからないことだけではありません。

何をAIに任せればいいのかわからない。

だったら研修でも、そこから扱う必要があります。

たとえば、

「毎週月曜日、前週の営業報告を30分かけてまとめている」
という仕事があるとします。

そこで初めて、

「では、報告メモをAIに整理させて、最後の数字と判断だけ自分で確認してみましょう」
と具体的な使い方が見えてきます。

AIから仕事を探すのではなく、仕事からAIを探す。

順番が逆なのです。

企業でAIに任せる作業を見つけるときも、繰り返している仕事から考えることが大切です。

この考え方は、個人事業主がChatGPTを仕事で使うなら?まず任せたい3つの作業でも紹介しています。

理由2 仕事内容もレベルも違う社員へ、同じ研修をしている

全員に共通する基本を学んだあと、
職種ごとの課題で試すと、自分の仕事に置き換えやすくなります。

職種に合わせた生成AI研修を説明するMiki AI講師
Miki@AI講師

20人の社員が同じ研修を受けているとします。
前からChatGPTを使っている営業担当者。
初めて画面を開く経理担当者。
部下が作ったAIの文章を確認する管理職。

全員に同じ例題を渡して、

「ChatGPTに商品紹介文を作らせてみましょう」
と教える。

研修としては進めやすいでしょう。

でも、20人が知りたいことは同じではありません。
営業なら顧客対応にどう使えるか。
経理なら数字を扱うとき何に注意するか。
管理職ならAIが出した内容をどこまで信用してよいか。
必要な知識も、実践する場面も違います。

先ほどの調査でも、期待した成果が出ていない理由として「受講者によって理解度・習得度にばらつきがある」が48.6%。
「受講者のレベル感に合っていない」も27.0%でした。
自由回答には「担当業務によって活用するシーンが異なるのに画一的な教育」という声もあります。
もちろん、企業研修ですから、一人ひとり完全に別の授業をするのは現実的ではありません。

全社員が知っておくべき、

  • 生成AIの基本
  • 情報漏えいへの注意
  • AIは間違った回答を出す場合があること
  • 最終確認は人が行うこと

などを共通で学ぶ意味はあります。
そのうえで、営業、管理、企画、顧客対応など、実際の業務に近い課題へ分ける。

ここまで進んで初めて、

「ChatGPTというサービスを知っている」
から、
「自分の仕事で使える」
へ変わります。

たとえば顧客対応を担当する社員なら、一般的な「文章を作ってみましょう」より、

「クレーム対応のメモから、上司への報告内容を整理する」

という課題の方が、自分の仕事として考えやすいはずです。
カスタマーハラスメント対応でAIをどのように使えるのかは、

カスハラ防止法対策にAIを活用すべき理由|企業が2026年10月までに備えることでも具体的に整理しています。

理由3 研修のゴールが「使える」ではなく「受講した」になっている

研修後の成果の見方に悩む企業担当者

受講率は100%でした。
でも、仕事で使えているかは、何を見ればわかるのでしょう?

生成AI研修で、最も見直した方がいいのはここかもしれません。

研修当日。

社員はパソコンを開き、講師の説明を聞きます。
用意された課題を入力すると、ChatGPTから回答が返ってくる。

研修は予定どおり終了。

受講者20名。
受講率100%。
会社へ提出する研修実施報告としては、きれいです。

では翌日。

朝からメールが届く。
電話が鳴る。
会議資料を作る。
顧客対応が入る。
昨日覚えたChatGPTを試すより、今までの方法で仕事を終わらせた方が早い。

そのまま一週間が過ぎる。

研修資料は保存されています。

受講履歴も残っています。

残っていないものがあります。
AIを使う習慣です。

2026年6月の調査では、研修成果が業務に活かされていないと感じる企業担当者41人に理由を聞いたところ、

  • 受講後に業務で実践する機会がない:48.8%
  • 受講率・完了率だけで評価されている:48.8%
  • 受講内容を確認する仕組みがない:41.5%
  • 受講者が業務との結びつきを見いだせていない:34.1%

という結果でした。

研修会社が悪い。
社員が悪い。
会社が悪い。

そんな単純な話ではありません。

問題は、研修終了をゴールにした瞬間、仕事へ戻す工程が抜け落ちることです。

「研修を受けました」では、仕事は変わりません。

研修の翌日に、

「昨日習った方法を使って、実際の業務を一つ処理してみる」

そこまで設計されているか。

さらに、

「うまくいかなかった理由を確認する」「社内で使えた事例を共有する」「別の社員も同じ方法を試す」

と続けられるか。

AI活用は、一度覚えて終わる知識というより、実際の仕事の中で調整しながら使い方を作っていく性質があります。

OpenAIも企業のAI活用について、単にAIを導入するだけではなく、社員が実際のワークフローをAIと組み直し、組織の中で改善を続けることを重視しています。
AIを入れたのに忙しさが変わらない場合は、AI単体ではなく仕事全体の流れを見直す必要があります。

その考え方は、AIで効率化したのに、なぜ忙しさは変わらないの?|見直すべきは業務の流れでも解説しています。

それでも「基礎を教える研修」は必要です

ここまで読むと、

「では、ChatGPTの基本操作を教える研修には意味がないのか」
と思うかもしれません。

そうではありません。

初めて生成AIを使う社員に、いきなり自分の業務をAIで改善してくださいと言っても難しいでしょう。
基本操作。
AIが間違える可能性。
個人情報や機密情報の扱い。
人が確認すべきポイント。

土台となる知識は必要です。

経済産業省が2026年4月に公表した「デジタルスキル標準 ver.2.0」でも、生成AIを単独の操作スキルとして扱うだけではなく、「問いを立てる」「仮説を立てる・検証する」といったビジネス上のスキルと掛け合わせて利用する考え方が示されています。
だから問題なのは、基礎研修ではありません。

基礎研修をゴールにしてしまうことです。

ここは分けて考えた方がいいでしょう。

企業が生成AI研修を選ぶなら、カリキュラムより先に聞きたいこと

カリキュラム内容だけでなく、
研修後に実際の業務で何を試せるかまで確認してみてください。

生成AI研修の選び方を説明するMiki AI講師
Miki@AI講師

研修会社を比較するとき、

「ChatGPT」「Gemini」「画像生成」「プロンプト」「最新AI」

と並んだカリキュラムを見るだけでは、実務で使える研修かどうかは判断できません。
私なら、研修会社へ次のように聞きます。

「研修後、社員は自分の仕事で何ができるようになりますか?」

答えが、

「生成AIの基礎を理解できます」

だけなら、もう一段聞いた方がいいでしょう。
営業担当者なら何ができるのか。
事務担当者なら何が変わるのか。
管理職なら何を判断できるようになるのか。
具体的に答えられるかを見るのです。
さらに確認したいのは4点。

  • 研修前に参加者の仕事内容を確認するか
  • 実際の業務に近い課題を扱うか
  • AIの回答を人が確認する方法まで扱うか
  • 研修後に実務で試すところまで考えられているか

派手なAI機能を10個覚えるより、

「毎週40分かけていた作業の一部を、自分でAIに任せられるようになった」

という方が、会社にとっては価値があります。
研修の価値は、スライドの枚数でも、紹介するAIの数でもありません。

生成AI研修の成果は「何人受講したか」では測れない

生成AI研修を導入するとき、どうしても管理しやすい数字があります。
受講者数。
受講率。
修了率。
研修時間。

必要な管理項目です。

ただ、そこで評価を止めると、本来の目的を見失います。
100人が研修を受けても、翌日から誰もAIを使っていない会社。
20人しか受講していなくても、営業報告、議事録、社内文章、情報整理など、複数の仕事で使い始めた会社。
どちらの研修が成果を出したと言えるでしょう。
見るべきなのは、研修当日ではありません。

研修が終わった、その翌日の仕事です。

社員が自分でAIを開いたか。
仕事を一つ任せてみたか。
出てきた回答を自分で確認できたか。
一つでも仕事の進め方が変われば、そこから社内に使い方を広げられます。
「生成AI研修を実施した会社」になることが目的ではありません。

生成AIを仕事で使える会社になること。

研修を選ぶときは、そこまで設計されているかを見てほしいと思います。

法人向け生成AI研修について

ミライラボでは、生成AIの操作方法だけを覚えるのではなく、実際の業務でどう使うかを重視した法人向け生成AI研修を行っています。

参加される方の仕事内容やAI経験を確認しながら、普段の業務に近い内容で生成AIを試し、「研修が終わったあと、自分でも使える状態」を目指します。

「社員に生成AI研修を受けさせたい。でも、受けて終わる研修にはしたくない」

そんな企業の方は、法人向け生成AI研修の内容をご確認ください。

社員に生成AI研修を受けさせたい。
でも、受けて終わる研修にはしたくない企業の方へ。

研修内容や進め方について、まずはお気軽にご相談ください。

参考情報

記事は2026年8月30日時点の情報をもとに作成しています。

  • 株式会社イー・コミュニケーションズ「大企業における生成AI研修に関する実態調査」
  • 中小企業庁「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書」
  • 経済産業省「デジタルスキル標準 ver.2.0」
  • OpenAI「How enterprises are scaling AI」