システムを導入すれば、仕事が楽になる。
本来は、そうなるはずです。
ところが現実には、システムの入れ替えに数年。データ移行は人力。
旧システムと新システムへの二重入力。さらに、アカウントを追加するだけでも費用が発生する。
私は会社員時代、そんな基幹システムの入れ替えを経験しました。
システムを新しくするために、現場の仕事が増えてしまう。
そんな経験をすると、いったい誰のためのシステムなのだろうと考えずにはいられません。
しかも、導入が終われば解決というわけでもありません。
毎月の利用料、カスタマイズ費用、操作を覚えるための時間……。
便利になるはずのシステムに、いつの間にか人間が合わせて働いている。
以前は、それでも既存システムを利用するか、専門会社に開発を依頼するしか、現実的な選択肢がありませんでした。
しかし今は、生成AIを活用して、自社の業務に合ったシステムを作る選択肢も生まれています。

毎月のシステム代が高いと感じています。
でも、使わないわけにもいきません。

プログラミングができなくても、AIで業務システムを作れるんですか?

AIで自作できるなら、今のシステムを解約した方が安くなるのでしょうか?
実際に、生成AIを活用して30種類以上の業務アプリを自社開発した企業もあります。
ただし、AIで作れることと、安心して使い続けられることは別問題。
結論から言えば、AIで作る選択肢は広がっていますが、すべてのシステムを置き換える必要はありません。費用だけでなく、作る時間・保守・データ移行まで含めて、既存サービスと使い分けるのが現実的です。
高額なシステムをすぐ解約するのではなく、費用と現場の手間を見える化し、AIで補える業務から試すのが出発点です。

この記事でわかること
- システム利用料以外に見落としやすいコスト
- AIを使った業務システム開発の実例と、必要になる時間
- 既存サービスと自作システムの使い分け方
- 導入を検討する前に整理したい費用・機能・現場負担
目次
基幹システムの入れ替えは、想像以上に大変だった
私は会社員時代、基幹システムの入れ替えを経験しました。
基幹システムとは、販売管理、在庫管理、会計など、会社の主要な業務を支えるシステムのことです。
一度導入すると、簡単には変更できません。
なぜなら、日々の業務だけでなく、長年蓄積されたデータや社員の仕事の進め方まで関係しているからです。
私が経験したシステムの入れ替えも、数年がかりでした。
データを移せば終わり、ではない
古いシステムから新しいシステムへ、データを移す。
言葉にすれば簡単ですが、実際はそうはいきません。
長年使ってきたデータベースには、入力方法の違いや重複した情報、整理しきれていないデータなど、さまざまな問題があります。
本来なら、移行前にデータを整理し、何を正しい情報として扱うのかを決めておく必要があります。
ところが、十分に整理できていない状態でも、システム移行を進めるよう求められました。
そして移管されたデータが正しいのか、確認して修正するのは現場の人間です。
新しいシステムにデータが入ったからといって、そのデータが正しいとは限りません。
システムを新しくする前に、データベースの中身を整えなければ、古い問題を新しいシステムへ持ち込むことになります。
現場を追い込んだ二重入力の期間
さらに大変だったのが、旧システムと新システムを並行して使う期間です。
同じ情報を旧システムと新システムの両方へ入力する期間は、現場にとって大きな負担でした。
同じ情報を、古いシステムにも、新しいシステムにも入力する。
普段の仕事が減るわけではありません。
そこへ新しいシステムの入力と確認が加わります。
しかも、両方のデータが一致しているかどうかも確認しなければならない。
システム移行の安全性を確保するために、並行運用が必要になる場合があることは理解できます。
しかし、実際に入力する現場の負担は相当なものです。
業務を効率化するためのシステム導入なのに、移行期間中は業務が増えている。
何とも皮肉な話でした。
アカウント追加も、カスタマイズも追加費用
そして、費用の問題です。
新しい社員が入社し、システムを利用するアカウントが必要になる。
それだけで追加費用が発生します。
安い金額ではありませんでした。正直、高いと感じる費用です。
さらに、業務に合わせて少しカスタマイズしたいと相談すれば、また追加費用。
もちろん、追加開発に費用が発生すること自体は理解できます。
開発会社にも作業が必要だからです。
ただ、最初から業務に必要だと分かっている機能まで、追加料金が必要になると話は違ってきます。
しかも、導入前の説明では「できます」と言われていたことが、実際にはできない。
これには本当に困りました。
話が違うと感じるほど、説明と実際の機能に大きな落差がありました。
それでも、すでに多くの時間と費用をかけて移行を進めています。
簡単に元のシステムへ戻すこともできません。
社員全員が操作を覚える時間も必要
新しいシステムを導入すれば、当然、社員全員が操作方法を覚える必要があります。
説明を受けても、普段使わない機能は忘れてしまう。
操作が分からなければ、詳しい人に聞かなければなりません。
基幹システムだけでも大変なのに、会社にはほかにもシステムがあります。
勤怠管理、経費精算、顧客管理、社内申請……。
それぞれ操作方法が違えば、覚える手間も増えていきます。
一つシステムが増えるだけなら小さな負担でも、複数になれば、社員が費やす時間はどんどん積み重なります。
ここで、私がずっと疑問に感じていたことがあります。
システム会社へ支払う金額は分かる。
でも、社員が入力・確認・操作習得に費やした時間は、いったい誰が計算しているのでしょうか?
本当に高いのは、毎月のシステム利用料だけではない
例えば、月額5万円の業務システムを利用しているとします。
※金額は比較を分かりやすくするための仮定です。特定のシステムの料金ではありません。
| 利用期間 | システム利用料の累計 |
|---|---|
| 1年間 | 60万円 |
| 2年間 | 120万円 |
| 3年間 | 180万円 |
| 5年間 | 300万円 |
月額5万円でも、3年間で180万円。5年間なら300万円です。
ただし、実際の負担はそれだけではありません。
アカウントの追加費用、カスタマイズ費用、保守費用。必要に応じて、データ移行や社員研修にもお金がかかります。
さらに見逃せないのが、社員の作業時間です。
例えば、システムで対応できない処理をExcelへ転記したり、複数システムに同じ情報を入力したりする場合。
その時間も、人件費として会社が負担しています。
システムの費用を考えるなら、少なくとも次の2つを分けて見るべきでしょう。
会社から支払うお金と、システムのために社員が費やしている時間。
もちろん、利用料の高いシステムが悪いわけではありません。
安定して動き、手作業を減らし、社員が迷わず操作できるなら、十分に価値があります。
問題は、支払っている費用に見合う効果が得られているかどうかです。
システムを入れても仕事が楽にならないと感じるときは、AIで効率化したのに、なぜ忙しさは変わらないの?|見直すべきは業務の流れも参考になります。
では、既存のシステムが自社の仕事に合っていない場合、ほかに方法はないのでしょうか。
AIによって自分たちでシステムを作るが現実的な選択肢に
以前から、自社専用のシステムを開発することは可能でした。
しかし、プログラミングの知識が必要で、専門会社へ依頼すれば開発費用もかかります。
多くの中小企業や個人事業主にとっては、既存サービスを使う方が現実的だったと思います。
ところが、生成AIの進化によって、その前提が変わり始めています。
例えば、こんな依頼です。
「顧客ごとに対応履歴を登録して、名前で検索できる画面を作りたい」
「毎月の売上を入力すると、担当者別に集計できるようにしたい」
「在庫が一定数より少なくなった商品を一覧表示したい」
AIに必要な機能を文章で説明すると、プログラムや画面を作成する支援を受けられます。
MicrosoftのPower Appsでも、Copilotとの対話を通じてアプリを作成する機能が公式に提供されています。
参考:Microsoft Learn「Copilotとの会話を通じてアプリを構築する」
ここで重要なのは、AIを搭載したシステムを作ることだけではありません。
AIを使って、普通の業務システムそのものを開発できるという点です。
プログラミングができなくても作れる?

でも、プログラミングが分からない人でも、本当に業務システムを作れるのでしょうか?
以前よりも、挑戦しやすくなっているのは確かです。
AIに作りたいものを説明し、作成された画面を確認する。思ったように動かなければ、修正したい内容を伝える。
専門用語が分からなければ、AIに説明してもらうこともできます。
ただし、AIに「顧客管理システムを作って」と頼むだけでは不十分です。
どんな情報を登録するのか。誰が閲覧できるのか。入力した情報を後から修正できるのか。
業務の条件が曖昧なままでは、AIが作ったシステムも使いにくくなってしまいます。
プログラミングができるかどうかより、まずは自分の仕事を整理すること。
何を入力して、どんな結果が必要なのかを考えるところから始まります。

では、実際にAIで業務システムを作り、成果を出している会社はあるのでしょうか。
外注なら約8,000万円。生成AIで30種類以上の業務アプリを開発した会社
2026年版の『中小企業白書』には、生成AIを活用して社内の業務システムを開発した企業の事例が掲載されています。
従業員85名の製造業で、建設機械や産業機械向けの部品加工・組立を行っています。
同社では、図面などの情報を紙やExcelで管理していました。
必要な資料を探すのに1〜2時間かかることもあり、情報の転記や集計にも手間がかかっていたそうです。
専門のエンジニアではない専務が開発
2023年末、専務は生成AIでプログラムを作成できることを知り、自社システムの開発に挑戦しました。
AIと対話しながらウェブアプリの仕組みを学び、約2年かけて統合管理システム「OKADA Board」を完成させています。
搭載されているのは、30種類以上の業務アプリ。
検査実績、品質報告、在庫管理、生産進捗に加え、労務管理や原価管理などの情報も一元化しました。
その結果、白書では次の成果が報告されています。
- 月5,000〜6,000枚分のペーパーレス化
- 月約530時間の労働時間削減
- 30種類以上の業務アプリを内製化
- 手順書の共有や従業員教育も改善
さらに、同等のシステムを外注すれば約8,000万円を要するところ、自社開発ではAIの月額利用料で済んだと紹介されています。
出典:中小企業庁『2026年版 中小企業白書』197ページ・事例2-2-14
ただし、見逃してはいけない「1,000時間」

外注なら約8,000万円のシステムを、AIの利用料だけで作れたんですか?それなら自作の方が圧倒的に安いですよね?
費用面では、確かに大きな成果です。
しかし、同じ白書には見逃せない数字が掲載されています。
AIとの対話に費やした時間は、合計1,000時間以上。
専務は、AIとの対話を重ねながら、ウェブアプリの仕組みを学び、開発を続けています。
つまり、AIを使えば何もしなくてもシステムが完成する、という話ではありません。
専門会社へ支払う開発費を抑えられても、自分たちの時間と労力は必要です。
それでも、同社が自社開発を選んだことには大きな意味があります。
現場から改善の要望が出れば、社内で対応を考えられる。
実際に、各部門の若手従業員を中心としたDX推進チームも組織されています。
一度導入して終わりではなく、会社の仕事に合わせて育てていけるシステム。
私は、費用削減以上に、そこに注目しています。
AIでの自社開発は、開発費だけで判断しないことが大切です。
作る時間、保守する人、将来の改善まで含めて考える必要があります。

それなら、今のシステムを解約してAIで作った方がいい?
ここは慎重に考えるべきところです。
私は基幹システムの入れ替えで大変な経験をしましたが、だからといって、すべての既存システムをAIで自作すべきだとは思っていません。
特に、会計・給与・決済など、正確性や法令対応が求められる業務では、既存サービスを使う価値があります。
システムの不具合で請求処理が止まったり、顧客情報が漏えいしたりすれば、利用料を節約できても意味がありません。
一方で、すべての仕事に高機能な既存サービスが必要とは限りません。
例えば、社内だけで使う売上集計表、簡単な在庫管理、作業進捗の確認画面など。
必要な機能が限定されていれば、AIを活用した開発も検討できます。
全部契約か全部自作かの二択ではない
実際には、3つの選択肢があります。
| 選択肢 | 向いている業務 |
|---|---|
| 既存サービスを使う | 会計・給与・決済など、安定運用や法令対応が重要な業務 |
| AIで一部の機能を作る | 独自の集計表、社内管理画面、作業の自動化 |
| AIを活用して自社開発する | 自社独自の業務が多く、開発・保守の体制を確保できる場合 |
例えば、予約管理サービスを利用している事業者なら、予約受付や決済は既存サービスを使い続ける。
一方、独自の売上分析や講座別の管理表だけをAIで作る。
そんな方法も考えられます。
ただし、既存サービスからデータを取り出せるか、外部システムと連携できるかは、サービスごとの仕様や契約条件によります。
私自身も、スクールの予約サービスでは設定しにくい部分があり、ChatGPTやClaude Codeを使って、自分の仕事に合う予約の仕組み作りに挑戦してきました。
予約の仕組みを自分の仕事に合わせて作った経緯は、非エンジニアがClaude Codeで予約サイト作成に挑戦|AIと一緒に仕事を整える3つの学びで紹介しています。
既存サービスの便利な部分は残し、足りないところだけを補う。
何でも自作するのではなく、自分の仕事に合わせて使い分けられることが、今の大きな変化だと思います。
AIでシステムを作れても、データ移行の苦労は消えない
もう一つ、基幹システムの移行を経験した立場から、伝えておきたいことがあります。
それは、AIで開発ができるようになっても、データの問題は残るということです。

AIで新しいシステムを作れば、古いデータの移行や二重入力も全部なくせるのでしょうか?
残念ながら、そう単純ではありません。
AIは、データの形式をそろえたり、重複している可能性のある情報を見つけたりする作業を支援できます。
しかし、どちらの顧客情報が正しいのか、過去の取引データをどう扱うのかといった判断には、業務知識が必要です。
特に、元のデータ自体が間違っていれば、新しいシステムへ移しただけでは解決しません。
これは、私が会社員時代に痛感した部分です。
システムを新しくする前に、今あるデータを整理する。
どの情報を正として扱うのか、誰が確認するのかを決める。
こうした作業は、AIが進化しても重要です。
また、AIが作ったプログラムには不具合やセキュリティ上の問題が含まれる可能性があります。
ソフトウェアの安全性に関する専門コミュニティ「OWASP」も、AIが生成したプログラムの確認と、人による責任ある管理の必要性を示しています。
参考:OWASP「Secure Coding with AI Cheat Sheet」
顧客情報や社員の個人情報を扱う場合は、アクセス権限、バックアップ、障害対応なども必要です。
AIで試作品を作れたとしても、そのまま業務に導入してよいとは限りません。
AIはデータ整理や移行作業も支援できます。
ただし、元のデータが正しいかを判断するのは現場です。
新しいシステムを作る前に、まず情報を整理しておきましょう。

システム代が高いと感じたら、最初に確認してほしいこと
では、自分の会社では何から始めればいいのでしょうか。
最初からAIで新しいシステムを作ろうと考える必要はありません。
まずは、現在契約しているシステムを一つだけ選び、次の3点を確認してみてください。
- 年間いくら支払っているか:月額料金だけでなく、アカウント追加、オプション、保守費用も含めて確認する。
- 実際に使っている機能は何か:契約している機能のうち、本当に必要なものを整理する。
- システムに合わせるために、人が何をしているか:Excelへの転記、二重入力、手作業での集計など、社員の負担を洗い出す。
例えば、毎月の売上を集計するために、複数のシステムからデータを取り出してExcelにまとめているなら、集計部分だけAIで改善できないか考えてみる。
小さな社内用の仕組みなら、実際の顧客情報を使わず、架空のデータで試作することもできます。
そこで便利だと分かれば、必要な安全対策や運用方法を確認しながら、少しずつ実用化を検討する。
反対に、既存サービスの方が安く、管理も楽だと分かれば、そのまま使い続ける方が合理的です。
目的は、AIでシステムを作ることではありません。
今よりも少ない費用と負担で、仕事が進む状態を作ることです。
まとめ|高いシステム代を払い続ける前に、選択肢を見直す時代へ
会社員時代、私はシステムの入れ替えに伴うデータ移行、二重入力、追加費用、操作習得の負担を経験しました。
あの頃は、どれだけ大変でも、用意されたシステムに仕事を合わせるしかない場面が多かったと思います。
しかし今は、AIによって、自分たちの業務に合ったシステムを作る可能性が広がっています。
もちろん、既存サービスを使った方がよい仕事もあります。
大切なのは、今あるシステムをすべて否定することではありません。
「昔から使っているから」「ほかに方法がないから」という理由だけで、費用を払い続ける必要はなくなりつつある。
私は、そこにAIの大きな価値を感じています。
次にシステムの契約更新が来たときは、料金表を見るだけでなく、一度考えてみてください。
「本当に必要なのは、今契約しているシステムなのだろうか。それとも、自分たちの仕事に合った仕組みなのだろうか」
以前なら考えられなかった選択肢が、今はあります。
今のシステム代と業務の負担、一度見直してみませんか?
「毎月のシステム利用料が負担になっている」
「システムに合わせて仕事をすることに限界を感じている」
「AIで業務システムを作れると聞いたけれど、自社でも使えるのか分からない」
そんな経営者・個人事業主の方へ。
生成AI未来創造スクールでは、法人向けAI研修や業務効率化に関するご相談を受け付けています。
今使っているシステムを、すぐに変更する必要はありません。
まずは業務の流れを整理し、既存サービスを活用する部分と、AIによって改善できる部分を見極めるところから。
会社員時代にシステム移行の苦労を経験してきたからこそ、導入する側だけでなく、実際に操作する現場の負担も大切にしたいと考えています。
