「人が足りない」

そう言いながら、社員が朝から会議録を清書している。
隣では、ExcelからExcelへ数字を転記。
営業担当は、過去メールを探して似た文章をまた書いている。

求人を出しても人が来ないのに、今いる人の時間は、昔から変わらない作業に消えていく。

少し矛盾していないでしょうか。

2026年9月15日に公表された日本商工会議所の調査では、全国2,654社の60.0%が「人手不足」と回答しました。
さらに、人手不足企業の48.2%で、すでに事業運営へ影響や支障が出ています。
建設業77.4%、運輸業72.2%、介護・看護業70.5%。もはや一部の業界だけの話ではありません。

仕事の悩みを抱える女性

求人を出しているのに、なかなか応募がありません。

仕事の悩みを抱える女性

一人休むだけで、仕事が回らなくなります。

仕事の悩みを抱える女性

でも、AIで人手不足が解決するって、本当ですか?

私は、AIはこれからの人手不足を解決する重要な手段になると考えています。

ただ、人間の代わりにChatGPTを一人採用するような話ではありません。

人が1時間かけていた仕事を30分にする。
新人が誰かに聞く前に、自分で調べられるようにする。
「○○さんがいないと分からない」を減らす。

つまり、人を増やすだけでなく、今いる人の時間の使い方を変える。

そこにAIが効いてきます。

人手不足だから人を採る。それだけではなく、「今いる人が何に時間を使っているか」を見る。AIを入れる場所は、そこから見つかります。

Miki AI講師 安心
Miki@AI講師

この記事でわかること

  • 同じ仕事にかかる時間を短くできる理由
  • 経験が浅い人の「分からない」を補える理由
  • 「○○さん待ち」を減らせる理由
  • 採用を待たず、今ある仕事から改善できる理由
  • 人にしかできない仕事へ、人の時間を戻せる理由
  • 事務仕事の先にあるフィジカルAIの可能性

人手不足は「求人を増やせば終わる問題」ではなくなった

人が足りない。

求人を出す。

来なければ条件を変える。

採用できたら教育する。

人手不足と聞けば、まず「採用」を考えるのは当然です。

ただ、働く人そのものが減っていくなら、企業同士で同じ人材を取り合うだけでは限界があります。

2026年版中小企業白書は、日本を「労働供給制約社会」と捉え、人手不足を乗り越えるためには、AI活用やデジタル化による「労働投入量の最適化」も重要だとしています。

少し難しい言葉ですが、要するに、

同じ成果を出すために、今までと同じ人数・同じ時間・同じ手順が本当に必要なのか。

そこを見直すという話です。

採用をやめる必要はありません。

採用する。
人も育てる。
そのうえで、仕事の回し方も変える。

人が足りない時代ほど、三つを同時に考える必要があります。

AIで人手不足を解決できる5つの理由

理由1|同じ仕事にかかる時間を短くできる

AIが一番分かりやすく効くのは、時間です。

メールを書く。
議事録をまとめる。
長い資料から必要な情報を探す。
文章を整える。
Excelの関数を考える。

仕事そのものはなくなりません。

でも、終わるまでの時間は変えられます。

66社・7,137人を対象にした生成AIの実証研究では、AIを継続的に利用した従業員は、実験後半にメールへ使う時間が週約2時間減少しました。仕事量や仕事の構成そのものに大きな変化は確認されていません。

つまり、

仕事は減っていない。
仕事に取られる時間が減った。


人手不足を考えるうえで、かなり重要な違いです。

中小企業基盤整備機構の2026年調査でも、AIの導入効果は「業務効率化/作業時間の短縮」が83.2%で最も高く、「人手不足対応」も33.9%に達しています。

1回5分の短縮だけなら、大した話には見えません。

でも、その5分を10人が毎日繰り返していたら?

1日50分。

年間で考えると、もう「たった5分」ではありません。

見るべきなのは、1回の時短ではなく、誰が、何回、その作業を繰り返しているか。そこです。

理由2|経験が浅い人の「分からない」を補える

人手不足の会社では、採用できた後にも別の問題があります。

新人が入ってきた。
でも教える側も忙しい。

結果、「去年のファイルを見て作って」「いつもと同じ感じで」「分からなければ○○さんに聞いて」となる。

新人からすれば、そもそも「いつも」が分かりません。

仕事の悩みを抱える女性

AIに聞いたところで、経験そのものは身につかないですよね?

もちろん、経験まで一瞬で手に入るわけではありません。

ただ、分からない用語を説明する。
作業手順を整理する。
過去資料を要約する。
メールの下書きを作る。
質問する前に確認項目を出す。

経験者へ聞かなければ一歩も進めなかった場面を減らせます。

5,179人のカスタマーサポート担当者を分析した研究では、生成AIを利用した人の生産性は平均14%向上し、経験が浅い人やスキルが低かった人では34%の改善が確認されました。

すべての仕事で同じ効果が出るという意味ではありませんが、AIが経験者の仕事の進め方を経験の浅い人へ広げた可能性が示されています。

新人をAIに教育させる、という意味ではありません。
分からないたびに先輩の手を止めなくても、まず自分で整理できる。
先輩は本当に判断が必要なところを教えられます。

Miki AI講師 安心
Miki@AI講師

仕事で分からないことをAIへ聞く場合の注意点は、仕事で分からないこと、まずChatGPTに聞くのはアリ?ナシ?でも紹介しています。

理由3|会社中の「○○さん待ち」を減らせる

午前10時。
Excelでエラー。

「○○さん、今日休みです」
止まる。

午後2時。
取引先への返信を書いたけれど、自信がない。

「部長に確認してもらおう」
部長は会議中。

また止まる。

夕方。
昔の資料が見つからない。

「○○さんなら知っているはず」
また、誰か待ち。

人が足りない会社では、仕事ができる人ほど仕事が増えるという妙な現象が起こります。

Excelも分かる。
文章も直せる。
過去の経緯も知っている。

だから、全部その人に聞く。
そして、その人から先に忙しくなる。
AIはベテラン社員の代わりにはなりません。

ただ、「関数の意味を説明して」「過去資料を3行で整理して」「返信案を作って」「考えられる原因を出して」くらいなら、最初にAIへ聞けます。

それでも分からない案件だけ、詳しい人へ持っていく。
人手不足で貴重なのは、人数だけではありません。

詳しい人の時間も、限られた人材です。

理由4|採用を待たず、今ある仕事から改善できる

求人を出した。
応募が来ない。

では、新しい人が入るまで何も変えられないのでしょうか。

そんなことはありません。

私自身、不動産管理の仕事で、毎月4時間以上かかっていた入金照合がありました。
入金照合そのものをやめたわけではありません。必要な仕事です。

問題は、その途中でした。

複数のExcelを開く。
必要な数字を探す。
別のExcelを開く。
また探す。
照合する。

同じ動きを毎月繰り返していました。
そこでAIも使いながら業務を整理し、複数のExcelに散らばっていた必要な情報を1つのExcelへ集約。

4時間以上かかっていた業務が、約10分になりました。

人を一人採用したわけではありません。仕事をなくしたわけでもない。

変えたのは、仕事が終わるまでの手間です。

人手不足対策というと、外から新しい人を連れてくることばかり考えがちです。

でも、会社の中には、「昔からそうしているから」という理由だけで残っている作業が案外あります。

AIは、そんな仕事を見つける相手にもなります。

AIを使ったのに忙しさが変わらない場合は、AIで効率化したのに、なぜ忙しさは変わらない?|見直すべきは業務の流れも参考になります。

理由5|人にしかできない仕事へ、人の時間を戻せる

AIを入れる目的を、

「人を減らすこと」
だと思うと、話がおかしくなります。

たとえば営業。AIに提案資料のたたき台を作らせたとしても、顧客との信頼関係まで任せる必要はありません。

介護なら、記録の整理時間を減らせても、利用者に寄り添う時間までなくす必要はない。
建設なら、報告書や写真整理を効率化しても、現場の判断は人が行います。

AIに任せたいのは、人でなくてもよい作業。
人に残したいのは、人だから任せたい仕事。

人手不足の会社ほど、区別が重要になります。

仕事の悩みを抱える女性

人が必要な仕事が多い会社なら、AIを入れても意味がないのでは?

むしろ逆です。
人にしかできない仕事が多い会社ほど、その人をパソコンの前に何時間座らせているかを見た方がいい。

現場の人が1時間かけて報告書を書いている。
毎日30分、写真を整理している。
同じ内容をシステムとExcelへ二重入力している。

現場の仕事をAIに任せられなくても、現場の周りにある作業なら変えられる可能性があります。

AIに人の代わりをさせるより、人にしかできない仕事へ時間を戻す。その方が、人手不足対策として分かりやすいと思います。

Miki AI講師 安心
Miki@AI講師

それでも「現場の人手不足」はAIでは無理なのか

ここまでは、主にパソコンの中でできる話でした。

でも、人手不足が特に深刻なのは建設、運輸、介護・看護など、実際に身体を動かす仕事です。
ChatGPTは荷物を運べません。
壁も作れない。
介助もできません。

ならば、現場の人手不足にAIは関係ないのでしょうか。

ここで話がもう一段変わります。

AIがパソコンの中から出てくる|フィジカルAIという次の変化

生成AIが広がってから、私たちはAIを「画面の中にいるもの」と考えるようになりました。

文章を書く。
画像を作る。
Excelを手伝う。
質問に答える。

ところが今、AIは現実世界を見て、考えて、動く方向へ進み始めています。

フィジカルAIです。

NVIDIAはフィジカルAIを、カメラやセンサーなどから現実世界を認識し、理解・推論したうえで、ロボットや自律システムが行動できる技術として説明しています。
倉庫ロボット、製造ロボット、自動運転なども対象です。

従来の産業用ロボットは、「決められた場所から部品を取り、決められた場所へ置く」といった、あらかじめ決められた動きが得意でした。

フィジカルAIが目指しているのは、その先。

周囲を見る。
状況を判断する。
変化に合わせる。
そして動く。

つまり、

AIが文章を書くところから、AIがモノを動かすところへ。

2026年7月には、日本の製造・ロボティクス企業がフィジカルAI分野の取り組みを進めていることも発表されています。
FANUCと富士通も、フィジカルAIの社会実装に向けた事業検討を開始しました。
両社が背景として挙げているのが、少子高齢化による労働力不足と熟練技術者の減少です。

仕事の悩みを抱える女性

それなら、近いうちに工場や物流は全部ロボットになるんですか?

そこまで単純ではありません。

安全性。
導入コスト。
設備との連携。
作業環境。
人だから対応できる例外。

乗り越える課題はまだあります。

ただ、AIによる人手不足対策を、

メール・資料作成・Excelだけの話だと思わない方がいい。

生成AIが事務仕事へ入り始めた次に、フィジカルAIが現場へ入り始めています。

数年前まで「AIは文章を書くもの」というイメージすらありませんでした。
今は、そのAIが現実世界で動く段階へ進んでいます。
人手不足対策として見ると、かなり大きな変化です。

Miki AI講師 笑顔
Miki@AI講師

では、人手不足の会社は何から始めればいい?

フィジカルAI対応のロボットを買うところから始める必要はありません。

まず探すのは、人が足りない部署でもありません。

時間が消えている仕事です。

  • 毎日、同じようなメールを書いている
  • 同じ数字を何度も入力している
  • 資料を探す時間が長い
  • 特定の社員に質問が集中している
  • 会議後の議事録に時間がかかる
  • 現場から戻った後、大量の事務処理が残っている

一つ見つけたら、AIに聞いてみます。

今から仕事の手順を説明します。
人が判断する必要がある部分と、AIで時間を短縮できそうな部分に分けてください。
仕事そのものはなくさず、手間を減らす方法を考えてください。

「ChatGPTで何ができますか?」と聞くより、ずっと実務に近い答えが出やすくなります。

まとめ|人手不足対策は「何人採れるか」だけではない

人手不足になったら、人を採る。

もちろん必要です。

でも、働く人そのものが減っていくなら、それだけでは追いつかない会社も増えていくでしょう。

AIで人手不足を解決できる理由は5つありました。

仕事にかかる時間を短くする。
経験の浅い人を支える。
「○○さん待ち」を減らす。
採用前でも業務を改善する。
そして、人にしかできない仕事へ人の時間を戻す。

生成AIは、すでにパソコンの中の仕事を変え始めています。

その先では、フィジカルAIが現場へ出ようとしている。

だから、人手不足の会社が最初に考えるべき問いは、

「AIに何をやらせる?」ではありません。

「今いる人に、本当に何をしてもらいたい?」

私は、そこだと思います。

人手不足対策としてAIを活用したい企業の方へ

生成AI未来創造スクールでは、ChatGPTの操作方法だけを覚える法人研修ではなく、実際の業務を見ながら「どこならAIで時間や手間を減らせるか」を整理しています。

「人が足りないけれど、どの業務から見直せばいいか分からない」

「AI研修をしたものの、実際の仕事では使われていない」

「特定の社員に仕事や質問が集中している」

そんな段階からでも構いません。

AIを入れることがゴールではありません。

今いる人が、本来やるべき仕事へ時間を使える会社にする。

人手不足対策としてAIを考えるなら、まずそこからです。

生成AI未来創造スクールでは、ChatGPTの操作説明だけで終わらない法人向けAI研修・業務改善の相談を受け付けています。

人が足りないけれど、どの業務から見直せばよいか分からない。AI研修を実施したのに仕事で使われていない。そんな段階からでも、実際の業務を確認しながら整理できます。

参考情報

この記事は、以下の公開情報を参考にしながら、AI導入を検討する企業向けに整理しています。

※AIによる効果や導入可否は、業務内容、データ、社内体制、利用するサービスによって異なります。重要な判断や外部への送信は、人が確認してください。